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目を覚ますと、目の前に自分の体があった。
触れようとして手を伸ばし、ギョッとする。
今の俺の姿はというと、透けていてふわふわ中に浮いている。
試しに、自分の体に触れようとしたが、すり抜けるばかりで、触れることは出来ない。
これは、いわゆる幽体というやつでは……
なぜ、そうなってしまったのかは、わからない。
いつも通りの日常を過ごしていたはずだ。
朝起きて、会社に行き、仕事をこなして、終電に乗る。
そんな毎日をかれこれ、半年くらい続けていた。
今日だって、仕事を終え、いつも通り終電に乗った。
座席に着いたところで、眠気が襲ってきて……、それから先が思い出せない。
そんなことを考えていたら、車掌らしき人が車両に入ってきた。
俺の体を見つけるや、傍に来て声をかける。
「お客さん、起きてください。終点ですよ」
車掌が声をかけるが反応はない。
それもそうだ、俺の魂は体から抜け出て、目の前にいるのだから。
車掌がさらに俺の体を揺すりながら、「お客さん! 起きてください!」と声をかける。
揺すった反動で、俺の体が力なく座席に倒れた。
「お客さん! お客さん!」
車掌の声が緊張を帯びたものに変わった。
救急車が来て、俺の体が運び出される。
その間、救急隊員が懸命に心臓マッサージを繰り返す。
だが、一向に蘇生する気配はない。
病院に着き、医師による確認で時刻が読み上げられた。
俺の死因。
過労による、心臓発作。
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