私が死んだ理由 いつもの日常

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
目を覚ますと、目の前に自分の体があった。 触れようとして手を伸ばし、ギョッとする。 今の俺の姿はというと、透けていてふわふわ中に浮いている。 試しに、自分の体に触れようとしたが、すり抜けるばかりで、触れることは出来ない。 これは、いわゆる幽体というやつでは…… なぜ、そうなってしまったのかは、わからない。 いつも通りの日常を過ごしていたはずだ。 朝起きて、会社に行き、仕事をこなして、終電に乗る。 そんな毎日をかれこれ、半年くらい続けていた。 今日だって、仕事を終え、いつも通り終電に乗った。 座席に着いたところで、眠気が襲ってきて……、それから先が思い出せない。 そんなことを考えていたら、車掌らしき人が車両に入ってきた。 俺の体を見つけるや、傍に来て声をかける。 「お客さん、起きてください。終点ですよ」 車掌が声をかけるが反応はない。 それもそうだ、俺の魂は体から抜け出て、目の前にいるのだから。 車掌がさらに俺の体を揺すりながら、「お客さん! 起きてください!」と声をかける。 揺すった反動で、俺の体が力なく座席に倒れた。 「お客さん! お客さん!」 車掌の声が緊張を帯びたものに変わった。 救急車が来て、俺の体が運び出される。 その間、救急隊員が懸命に心臓マッサージを繰り返す。 だが、一向に蘇生する気配はない。 病院に着き、医師による確認で時刻が読み上げられた。 俺の死因。 過労による、心臓発作。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!