死後の叫び

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 看護師の母が言うには、病院で起こる不可思議な現象。いわゆる心霊現象に属する類いの出来事は、割とよく起こることなのだそうだ。  僕が長年共にしてきた持病の腎臓病で検査入院をしていたときのこと。暇潰しにと病院内のコンビニで買った有名なホラー映画の小説版を読んでいたら、見舞いに来てくれた母が「よく病院でそんな本読めるわね」と言って、勝手に話を始めたのだ。  病院での心霊現象といえば、亡くなったはずの入院患者の部屋からナースコールが鳴るとか、深夜の病棟で謎の黒い影を見るとか、その辺りが定番だろうと思うが、それはごく当たり前に起こることらしい。母曰く、「安定してたはずの患者さんの容態が急変して亡くなってしまうくらい」起こるらしいが、なんとも不謹慎な例えの上、それがどのくらいの頻度で起こることなのかさっぱりわからなかったので、「ふーん」と相槌を打つだけにとどめておいた。  他にも母が経験(遭遇?)した心霊現象として、亡くなった患者さんの病室を通ったときにお経が聞こえたけど、もちろんドアを開けた先には誰もいなかったとか、深夜、誰もいないはずなのに洗面所の蛇口が勢いよく開かれて水が流れたとか、なぜか線香の臭いが漂う部屋の患者さんが数日後には亡くなっていたとか、いろんな現象を紹介してくれた。  どれも遭遇したら忘れようにも一生忘れられなそうな背筋が凍りつくようなエピソードだったが、それを淡々と話す母の様子にやっぱり人の生死と向き合うような看護師をやっていた度胸のようなものと同時に、若干の怖さを感じてもいた。 「その中でも飛びきり怖い出来事があったのよ」ーーと、母は急に小声でそのエピソードを話し始めた。
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