死後の叫び

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 あれは、救急車で搬送されてきた高齢の男性だったわ。そろそろ根雪が積もるかというくらいの冬の始め頃。そう言えばとても寒かった日なのよね。ほら、雪が積もる前って逆に寒いなあって感じるじゃない。風が冷たくて、体が凍えるような。  ああ、そうそう。それでウチの市立病院に男性が運ばれてきたのよ。脳梗塞で手の施しようがなくて間もなく亡くなってしまったんだけど。  それで、救急車に乗り合わせた息子さんがすぐに家族へ連絡を取って、息子さんの奥さん、お孫さんが駆け付けて、霊安室へエレベーターで向かったのね。私ともう一人の看護師と、あとご家族と亡くなった男性の何人かしらね。……えっと、6人かしら。エレベーターに乗り込んで、霊安室のある地下2階のボタンを押したの。  そしたらすぐにドアが開いて。誰かが乗り込もうとして開けたのかなと思ったんだけど、外には誰もいなくて、まあ、狭いエレベーターだから、ご家族かあるいはベッドの端とかが開くボタンを押ささったのかなって思って、もう一度閉めるボタンを押したの。  そしたらまたすぐに開いてね。みんなでボタンに触れていないか確かめたわ。で、もう一度閉めるボタンを押したんだけど、また開いて。重量オーバー? エレベーターの故障? とかいろいろ考えてたら、ドアが閉まって、今度はようやく動き始めたの。  ご家族の方はお互いに目を合わせて「何か変だったよな」「お祖父ちゃんかしらね」なんて話をしてたんだけど、私は体の震えや冷や汗を隠すのに必死だったわ。  後から同乗した看護師にも聞いたけど、何にも聞こえなかったって。だけど、私、確かに聞いたのよ。 「おい、おれはまだいきてるぞ」ーーって。
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