だぶる

　確かに。俺がいつも見ている朝のニュースは、悪友が言ってる男の気象予報士の番組だった。
　ただ今朝はチャンネルを変える前に、そいつが目に入ってきた所為で、そのままチャンネルは変えずじまいだったんだ。
「ドラマの紹介とかで、ゲストで出てたんならともかくなあ。話題になるようなハプニングでもあったら誰かがネットに動画をあげる可能性もあるだろうけど、そういうの、なかったんだよな」
「ないない。いたって平和な中継でした」
　全国的に晴れだったし、台風も何も近づいてさえない。

「しかたないなあ。じゃあ、自称歩くタレント名鑑である俺様が当たりをつけてやる。どんな奴だったか言ってみ？」
「えっと……」
　俺は必死で記憶を辿った。
「まず性別は男で。背は中くらい。１７０ちょいかなあ。太ってもいなくて痩せてもいない。髪は黒……」
「ちょいちょいちょい…待った。そんな奴、そこらじゅうにごまんといるぞ。もうちっとわかりやすい特徴とかないのかよ」
「そう言われても、ごくごく普通の奴で」

　めちゃくちゃ格好良くもなければ、不細工というわけでもない。
　服装だってどっかのデパートや駅中の安い吊るしものっぽくて。たぶん俺も色違いで持ってそうなパーカーにＴシャツ。
　それこそ本当にどこにでもいそうな感じ。