7人が本棚に入れています
本棚に追加
すぐうしろにいることはわかっていた。
――絶対にふりむいてはいけない。
美弥子の言葉を思い出し、私はうしろを見ないように気をつけて出窓を離れた。
もらった粗塩はキッチンのシンク下に仕舞ってある。
落ち着かなきゃ。
体の奥から恐怖が、尽きぬ泉のように湧きだしてくる。
ふらついて床に手をつき、立とうとしたが膝に力が入らなかった。
なんとか這ってシンクのところにたどり着き、震える手で扉をあけた。
粗塩の袋を破り、手を突っ込む。
「どうか立ち去って下さい!」
背後に向かって、肩越しに塩をかける。
「私は何もできません!」
言葉を繰り返し、狂ったように粗塩をふった。
気が付けば、袋は空っぽになっていた。
最初のコメントを投稿しよう!