横取りされるぐらいなら

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すぐうしろにいることはわかっていた。 ――絶対にふりむいてはいけない。 美弥子の言葉を思い出し、私はうしろを見ないように気をつけて出窓を離れた。 もらった粗塩はキッチンのシンク下に仕舞ってある。 落ち着かなきゃ。 体の奥から恐怖が、尽きぬ泉のように湧きだしてくる。 ふらついて床に手をつき、立とうとしたが膝に力が入らなかった。 なんとか這ってシンクのところにたどり着き、震える手で扉をあけた。 粗塩の袋を破り、手を突っ込む。 「どうか立ち去って下さい!」 背後に向かって、肩越しに塩をかける。 「私は何もできません!」 言葉を繰り返し、狂ったように粗塩をふった。 気が付けば、袋は空っぽになっていた。
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