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私はスマホに飛びつき、美弥子に電話をかけた。
「やっぱり出たよ!塩かけたけど大丈夫かな?」
「すぐ出た方がいい。迎えに行くから大通りで待ってて」
「わかった」
「ふり返ったらだめだからね」
ゾワッと皮膚が粟立つのを感じ、スマホだけを握りしめて部屋を飛び出した。
アパートの階段をおりようとした時、線路が視界に入る。
駅から徒歩5分の近さが気に入って入居した物件は、住んでみると早朝から深夜まで列車の音と振動がひどく、安い家賃の理由がわかった。
その路線は、人身事故が多いことでも有名だった。
ブルッと身震いし目をそらす。
小走りで階段を下りると、線路とは逆方向に走った。
美弥子とは大学の入学式で知り合った。
私と違って東京育ちの彼女は、エスカレーター式で上がってきた附属高校組だ。
『美弥ちゃんって子、たしか霊感強かったんだよね』
ほどなく学内でそんな噂を聞いた。
私は幽霊なんて見たことがなく、半信半疑だった。
彼女の自宅は私と同じ沿線にあり、よく一緒に帰るのだが、寄らないかと誘っても断られてしまう。
「あの駅、ちょっと怖くて」
ポツリと言われた言葉に気を悪くしたのは、それが単なるいい訳だととらえ、そんな言い訳を作ってまで私の部屋に来たくないのかと思ったからだ。
まさか本当だったなんて……。
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