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とある夜の街の広場、そこには噴水がある、昼間であればさぞかし綺麗な物であったであろう噴水の水は赤黒く濁り、そこには人であった”物”が噴水に浮かんでいた。
その”物”の顔は裂かれ、身体の大半を獣に食い荒らされたかの様にボロボロだ、手足も欠けてしまっている、それが人とわかったのは身に付けていた衣服
だ、かつてはそれなりに高かったであろう黒いコートにシルクハットはズタズタに斬り裂かれている。
そして今現在、その広場には二つの生き物が居る、
一つは何処かグリム童話に出てくる狼男の様な姿をしていた、しかし、その狼男の姿は血だらけだ、まるで身体の皮が剥がされたかの様に血に塗れていた
もう一つはボロボロに壊された甲冑を身に纏った
少年だ、どうやら脚を負傷したらしく壁に背を掛け座りこんでいる様だ少年の顔は苦痛に歪んでいる。
少年が持っていたであろう武装は全て壊れてしまっていた、槍は折られ、剣は壊され、盾も砕かれている、少年の顔は苦痛に歪み、青ざめている。
「なんで...俺ばかり...ゲホッ...ゴホッ...。」
血、血、血、何処もかしくも血みどろの景色ばかり、今まで自分がいた場所が如何にファンタジーだったのか工藤 優という少年は思いしらされていた。
異世界転移という余りにも理不尽な出来事、そして
転移先での己の冷遇、更にはダンジョンでの戦闘中に”味方”である筈の人間達の攻撃、
そしてダンジョン内に居た”ナニカ”を目撃してしまった結果、今の状況にいたる。
「ああ、くそっ、誰か...助けてくれよっ...。」
優は助けを乞う、それが余りにも可能性が低い物だとしても、今の優にはそれ以外なにもできはしないのだから。
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