第三話 友引忌

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第三話 友引忌

 父の世代は職を求めて地元を離れる人が多かったようだが、祖父の世代は農家の働き手が求められていたせいか、長男でなくとも実家の手伝いをしながら農閑期に出稼ぎしたり臨時の仕事をする人が多かったという。  だから、村には本家を継げない次男以下が家を構えた分家というものが沢山あった。  本家で冠婚葬祭があれば、分家の者は頼まれなくとも駆けつけて手伝うのが不文律のようなもの。昨今では結婚式も葬式もそれなりの会場を借りてやるのが一般的だが、自宅で行っていた時代は大変だったらしい。  村では葬式だけは自宅から出したいという家が、実は今でも少なくない。  父の実家のある集落には大きな農家が数軒あり、それらのお宅もそういう考え方の古い家であった。  その年の春、ある農家の世帯主が亡くなった。  70代ではあったが現役バリバリで田んぼに出て働いていた人だった。家族は自宅で葬儀を行うことを決めた。亡くなってから全てが終わるまで一週間かかるほどの旧式の葬儀だった。     
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