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道すがら薄暗かった風景も、人里離れた山の中腹に着いた時にはすっかり暮れてしまった。坂本君は幅員の広がった部分に車を停めた。
「この辺じゃなかったっけな」。
車から降りて回りを見渡したが、阪本君の白いセダンが灯すヘッドライトの先以外はあまりよく見えなかった。そのライトはまず手前の空き地を灯し、その先は森の入り口のようになっている。暗い夜のそれは黒と深緑色のベターッとした一枚絵のようで立体感に乏しい。
「森のなか入って、その場所まで行くのか?」
「あぁ…」。
「行くなら車のライト消して、懐中電灯持って来んだけど」。
空き地のわきに、ちょうど座るのに良い高さの洗濯機と冷蔵庫が転がっていた。
「ちょっと疲れたから少し休んでから行きたいな」。
そう言って僕は冷蔵庫に腰掛けた。
「お前運転してたわけでもないくせに」。
「この冷蔵庫や洗濯機も坂本君が捨てたの?」
「ちげーよ、なんでこんなバレバレな場所に捨てんだよ。しかもこれっぽっち」。
坂本君はバカにしたように笑った。違法産廃業者の阪本君に言わせると「地球は僕たちのゴミ箱」だそうだ。
「まあ大きく見ればそうだろ?だってそもそも人間がうじゃうじゃしてんだから」。
「え?」
僕は言っていることの意味がわからなかった。
「どこもかしこも人間が徘徊してる。それがこの星全体がゴミ箱ってことを証明しているだろ。地球は人間っていうゴミが入れられている大きなゴミ箱」。
阪本君はバカにしたように片方の唇を上げて、嫌な笑みを浮かべながら言う。僕はその言い分に対して、『ゴミども』がいない場所を探してコッソリと物を捨てている阪本君は矛盾していると思ったけど、黙っていた。人間がゴミである理由も少し気になったが、それも聞かなかった。聞いても無駄だ。
ところで阪本君は「女はヤるだけの肉便器だ」とも言う。殴って拉致した女を散々レイプしてから、ボコボコにして殺して山に捨てたりしたと言う。
「女も産廃だよな、業務用の便器だから。セックス産業ってか。だから、いらなくなったら産廃にぴったりだよな!」
「強姦って業務なの?」
言葉がないわけだが、何か言おうと思って出てきたのはそんなことだった。彼の行う無理矢理のそれをセックスと言うのは嫌だし違うと思うので、強姦と言った。
「ハハハ、まぁ業務でもいいんじゃねえの。なんでもいいよ。で、どうすんだよ。見に行くの?女埋めた所」。
「……」。
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