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「手ぇ合わせんだろ、だからわざわざ連れて来たのにさ」。
そんなことして意味あるのか、とでも言いたそうにヘラヘラ笑っている。
「ちょっとだけ待ってくれよ。お金は払ったでしょ」。
「まぁな、確かに金は貰ったからどっちだっていいけどよ」。
僕は僕で、本当は物凄く腹が立っているのだけど、なぜか何も感じていないような気分だった。あまりに腹が立つと、いつもその時は感情がなくなってしまうのだった。落ち着いてくると後からまた耐えられなくなるので、怒るときに怒ると言うか、殺すべきなのだが、あまりに酷い場面に直面すると何も感じなくなり、あらゆる気力がなくなってしまうのだった。
僕が黙っていると、阪本君がしゃべりだした。
「そう言えば誰かが女は生む機械って言ってただろ。違うよな。女は機械じゃねえよ、便器でしょ。肉便器」。
「ふうん。僕はよくわからないけど、『女が生む機械』なら『男は搾汁機』だとは思ったよ。みんな機械でさ、心ある生きものなんかいないんだ」。
当然きみも含めて、と言うのはやめて、話を続けた。
「ついでに『生む機械』と『搾汁機』なら搾汁機の方が情けない感じして良くない?ふさわしいっていうかさ。汁だもん。だけど阪本くんは違うんだな。ね、お前は汁出しうんこ袋だよ、搾汁機ですらねえな。おめぇの頭ン中、脳みその代わりに丸めた古新聞でも入ってんじゃねえの。アハハハハ」。
そう言ったら阪本くんは怒り出した。まだ森の中に入ってもいないのにもう怒ってしまうのか。
「なんで怒るの。ゴミのくせにいちいちおこるなよ、お前ゴミなんだから」。
坂本君は無言で車に近づきトランクを開け、中から大型のスコップを取り出した。僕は隠しているナイフで彼を刺した方が良いと思ったのだけど、大事な時に無気力になってしまうために、ただ彼をぼんやりと眺め、『あぁ、この生きものは僕を殴るつもりだな』と思った。短絡的な彼は取り出したスコップを持ち僕に近づいてきて、それで僕を殴った。瞬間目が覚めたような気分で
「ほらね!!」
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