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そう叫び僕は倒れた。倒れた僕の頭を更に執拗に叩く阪本君。余りの痛さに暴れるが、しだいにまた無気力になっていく僕。倒れた僕がぼんやり伸びていると、彼は再びトランクへ向かう。開けっ放しにしてあったそこから赤いポリタンクを取り出した。蓋を開けると入っているのは当然灯油だ。そしてこれも当然、倒れている僕に灯油をドブドブとかけ始めた。ありきたりだ。全てありきたり。こんな人非人と二人で暗い山に来たなら殺されかねないのは折り込み済みだ。ただ、展開があまりに早すぎる。『速すぎるが、まぁ別にいいか…』。
「おい阪本、お前それでポケットからジッポー取り出してカッコよく火ぃ付けてさ。それでそのジッポーを俺に向かってポンと放るんだろう?クライム映画の主人公みたいにさ。かっこいいよな坂本君はさぁ!もったいないから屈んで手ぇ延ばして着火すればいいのに。でも知ってんだ。お前それ本物のジッポーじゃないだろ。100均で買ったジッポーもどき。だからお前はそれを放れるってわけさ。主人公ヅラはしたいけど、お前ケチ臭そうだもんな」。
すると坂本君は僕の言った通りジッポーもどきを取り出し、カッコよく火をつけ、それをポンと僕に向かって放り投げた。
「ほらね!!」
灯油に引火して火が上がり、僕を包み込む。こうして僕はあっさり殺されてしまった。短絡的な坂本君は、「こんなバレバレな所に捨てるか」と言った場所で僕を燃やしてしまった。大々的に火も上がり、本当に馬鹿だ。でも僕は死にたかったからいいんだ。良かった良かった。ここなら少しは目立ったかもしれない。明日になれば通る人もいるだろう。そしたら黒い煤も残っていて目立つ。ぼくの身体も阪本君の産廃として山に埋められるかダムに沈められるのだろうか。産廃悪魔の阪本君にとって、ぼくは何の産業だろう。
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