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エフィはユフィと喧嘩している。なぜなら、彼女はエフィの一番仲のいい友達とこれ以上会ってはいけないなんてひどいことを言うのだ。黒い髪に甘い花の香り。艶やかに笑うカレンをユフィも気に入ってくれると思ったのに。
大好きだけど、今は嫌い。エフィは思い出した怒りを燃料にして、必死に耐える。
扉の音はますます激しくなっていた。その異様な迫力に体を震わせる。叫んではいけない。気づかれては、きっと何か大切なものを失ってしまう。
「出て来いよ」
「大丈夫。酷いことしないから」
耳を塞ぐ。彼らはいつにもましておかしかった。エフィのことを熱のこもった目で眺め、服を引きはがそうとする。その理由は分からないけれど、いけないことをしようとしていることは理解していた。だから、いつもはおとなしくしているのに逃げ出したのだ。使われなくなった倉庫に閉じこもり、身を潜めている。
怖い。酷いことをするけれど、引き際をわきまえていた。冗談ではない遊びをするようになったのは、いつからだっただろう。
とうとう扉が壊れてしまった。隙間から見える目は、エフィのことを一心不乱に映している。
「だずげで」
濁った声が響いた。エフィは数秒書けてその意味を理解した。耳を塞いでいた手を取り除き、立ち上がる。あれほどうるさかったことが夢みたいだった。窓に映っていた黒い影はなくなり、風の音だけが聞こえる。
「今の声、どこかで聞いたような……?」
おかしいのはそれだけではない。形がはっきりした視界に、細いながらもきちんとある右手。エフィは落ち着かない様子で周囲を見回す。ここはどこだろう。早く屋敷に帰らなければ姉が心配する。姉は気の強そうな顔をしているけれど、寂しがりなのだ。
これはきっと夢だ。でも、こんなに現実的な夢はあるのだろうか。寒くて体が震えるし、あちこち痛い。目覚めないといけないのに、夢は終わらない。
「エフィ! 下がって」
彼女の指示に従って下がれば、扉が吹っ飛んだ。エフィと同じ金色の髪がなびく。分厚い防寒具を着込んだユフィは勢いよくエフィの元へ飛び込んだ。乱れた衣服に顔をしかめ、今にも泣きだしそうな顔で縋りつく。
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