思い、がけなく

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思い、がけなく 気がついた時には絡みついていた脚は離れ、 持ち上げられたシーツからわずかにエアコンの冷気が忍び込んできた。 薄く目を開けると濃い肌色の裸の背中が白いバスローブに覆われるところだった。 伸ばした指は届かない。 そのまま振り返らずに浴室に向かう後ろ姿。 猫のように丸くなりながら、シーツの中の自分の肌を抱きしめると、満足してると喉が鳴る。 多少は乱暴にされるのが良い男の身体は、心地よい怠さに包まれて時計さえ見なければもう一眠りするところだった。 「え?9時半 ! 」 慌てて起きると全裸のまま浴室に駆け込む。 シャワーブースにいる恋人にキッスを投げるとバスタブの中で慌ただしく髪の毛から足の先までざっと洗う。 カラスの行水のあとは真名彦のバスローブを引っ掛けてベッドルームに戻った。 昨夜開けっ放しのカーテンからは京都の街中が見下ろせる、目に付いたのは赤い鳥居。山に囲まれた京の街の気温は今日も40℃に近くに上がるだろうな。 バスタオルを腰に巻いた真名彦が浴室出てくる。 「 どうした?慌てて 」 「 昼前に今夜のフェスの打ち合わせがあるんだ 」 「どこでだ?」 昨日の店のだいたいの場所を教えると、 「 そうか 」 と言いながら窓際の俺を背後から抱きすくめる。頸に擦れる髭剃り後こそばゆさになんだか凄い満足感を覚えた。 「 まだ、足りない?」 「 ばか言え……」 「 でも勃ってる 」 「 朝の挨拶だ 」 それならと振り向きざまに跪いて真名彦のバスタオルを腰から外すと黙ったままで俺のことを正視している男のうすく勃ち上がっている雄を舌で舐めあげる。 香る石鹸と残る男の匂いに疼いてくる身体が止まらない。
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