パラドックスチェリー

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ハチはそのあと、私の縛られていた紐をほどいてくれた。 やっと自由になれたのに私はうまく立てなくて安心と余韻で足に力が入らない。結局私はハチにおんぶされながら、この場所を出た。 今何時だか分からないけど、無情にも星がキレイで私はおんぶされている手をぎゅっとした。 「ハチごめんね。顔……痛いでしょ?」 きっとたくさん殴られたんだと思う。 ハチだってボロボロなのに今度は立てないとか、私はハチに迷惑かけっぱなしだ。 「別に平気だよ」 ハチは私になにも聞いてこない。 怒鳴ってくれたほうがラクなのに、それさえもしようとしない。 「ねぇ、ハチ。なんであの場所がわかったの?」 もしハチが来なかったら私はあのまま一生消えない傷を作るところだった。 「裕子ちゃんから聞いた」 「裕子から?」 「ナナの帰りが遅いからっておばさんがうちに来て。スマホの電源切れてるし、心当たりはないかって聞かれたから知ってるヤツに連絡しまくって裕子ちゃんの番号にやっとたどり着いて」 「……」 「ナナと一緒にいる?って聞いたら今日は健二くんと会うって言ってたけどまだ帰ってないの?って。それでおかしいことに気づいて、とりあえず水上森公園に行ったけどいないから、そこからは手当たり次第。……見つかって本当によかった」 ハチがどれだけ私を探してくれたのか目に浮かぶ。 ハチがいてよかったことなんて数えきれないほどあるけど、今回は命の恩人といっても過言じゃない。 「ごめん。ありがとう……。本当にありがとう」 ハチの背中が私の涙で濡れた。
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