パラドックスチェリー

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星空の下、ハチが黙々と歩き進める。 白いガードレール向こう側を車が何台か通過して、オレンジ色の該当がぽつぽつと私の歩く道を照らしてくれていた。 「ハチ。ひとつ聞いていい?」 「ん?」 「なんで栗原先輩と付き合ったの?」 今聞く質問じゃないかもしれないけど、怖い目に遭って、本当に命の危機を感じて、ハチに二度と会えないかもって本気で思ったから。 聞きたいことは我慢しないで聞こうと決めた。 「好きになりたかったから。先輩がっていうか誰かを」 ハチは迷わずに答えてくれた。その表情は後ろにいる私からは見えない。 「なんで?ハチ今までだって好きな人いたじゃん」 「いたけど、付き合うとか特別にって感情じゃなかった。だから先輩に付き合おうって言われて、今までと違う恋愛ができるんじゃねーかって思ったんだよ」 「好きじゃなかったの?」 「今となってはわかんない。あんな本性知っちゃったし尚更」 もしかしたら先輩は私たちの関係が羨ましかっただけなんじゃないかってふっと思った。 それにハチに対しての先輩の行動が全部嘘だったとはどうしても思えない。だから人を疑うことを知らないって言われちゃうんだけど、これはただの女の勘。
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