パラドックスチェリー

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「じゃ……キス以上のことしてないの?」 私がボソボソと聞くとすぐに「は?」と強めに帰ってきた。 「だからその……キスマークついてたじゃん」 この際だから全部聞いてしまおうと思ったけど、やっぱりこういう話は慣れてなくて、聞いてる私が恥ずかしい。 「え、なにそれ。いつの話?」 「と、とぼけないでよ」 「とぼけてないし」 「首筋に赤いマークあったじゃん……」 「首筋?あぁ、あの虫刺され?」 「む、虫刺され!?」 いや、そんな古典的な言い訳ある? でもハチが誤魔化すわけないし、先輩だってたしかハチは誘っても見向きもしなかったって言ってたっけ。 「なんかヘンな虫に突然刺されてさ。いた痒くて暫く赤くなってた」 「本当に?」 「本当だって。ほら、よく見ろ」 ハチが首をこっちに向けて私から見やすくした。 たしかにキスマークらしきものがあった場所にはぽつんと小さな虫刺されの痕が。 ……なんだ。虫か。 私は虫ごときでハチが遠くにいったとか、大人になっちゃったとか考えてたの? 「ふ、あはは」 なんだか急に可笑しくなって笑いが止まらない。 「ってかそうやって勝手に想像だけで考えるのやめて。なんでも聞けばいいじゃん」 「うん。ごめん……ぷ、はは」 「笑いすぎじゃね?どうした」 だってタイミングよくハチがそんな場所を刺されちゃうところとか、タイミングわるく私が勘違いしちゃうところとか。 ハチはハチで、私は私だなぁと思って。
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