「それが貴方の死ぬ理由」

4/5
前へ
/5ページ
次へ
 それから、1年間ずっと同じように束縛されて疑われて、それでも僕は彼女が好きでした。バンドも異性とは、組みませんでした。ドラムをしている部員は少なかったので、度々声をかけられましたが、断りました。たまに仲のいい男友達と居ても不安がられたので、友達と過ごす時間も減らすように心がけました。  大学四年になった僕はやがて、卒論と英語力を上げるための勉強と就職活動に追われるようになりました。それでも、週に一度は彼女とデートをして、バイトのない夜は遅くまで通話をしました。その頃には、どんな人も信じられない彼女のことをどうにかしてあげたいと思っていたので、面倒だとは思っていませんでした。けれど、毎晩の彼女との通話は体力的にしんどいと思わざるを得ませんでした。  どうにかしようと考えた結果、婚約指輪を渡しました。彼女がこれで、少しでも安心してくれればいいと思いました。今後の考えや、どういった職に就きたいか、といった話もしました。指輪の効果は、僕のほうにありました。指輪をきっかけに僕は、別に彼女とデートしなくても内定を取ってしまえばたくさんできるのだから、我慢しようと考えました。不安がる彼女よりも、この先の安定を選んだほうが後々、彼女のためになると考えました。彼女だってそれくらいわかってくれるだろうと思ってしまったのが、最大の過ちでしょう。     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加