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ちょうど、川の真ん中に差し掛かった頃であろうか?
ガタンと大きく船が揺れた。
「何か大きな石にでも当たったのかしら?」
好奇心旺盛な女性は船から顔を出し、川を覗こうとした。
「いかん!」
船頭が大きな声を出した。
女性はびっくりして、船頭の顔を見るが、彼は立ったまま、ジッと一点だけを見ている。
そこは女性が覗こうとしていた場所であったので、何があるのだろうと、再度、忠告を無視して、船から体を乗り出した。
すると――――
びちゃっびちゃっびちゃっ!
ばしゃっばしゃっばしゃっ!
沢山の魚が一斉に跳ねているかのように、水面が激しく飛沫を上げだす。
「えぇ?」
突然の出来事に、驚きの声を上げると同時にに、縁に置いていた手が、いきなり何者かに捕まれた。
「危ない!」
船頭が竿を手放し、駆け寄ろうとするも、時、既に遅し。
女性は一気に川へと落ちていった。
「きゃぁぁっ!」
大きな水飛沫と共に、叫び声が上がる。
しかし、それはたった一瞬の出来事。
女性は、何十本もの白い手に羽交い絞めされるかのようにして、川の中へと引きずり込まれて行った。
荒々しく揺れる水面。
水中からゴボゴボと泡がたつ。
大きく黒い影は、苦しげにもがきながら下へ下へと沈んでいった。
その後、静かになった水面に、小さな泡が数個浮かび、そして消えた。
船頭は、落とした竿を拾うと、また、ゆっくりと元の船場へと漕ぎ出した。
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