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引っ越しから1ヶ月ほどが経ち、皆の仕事が落ち着いたら行く、と言ってくれていた会社の同期達4人が、お酒やつまみを持って引っ越し祝いに来てくれました。
「えー!すごーい!」
「アメコミ好きなんだぁ!?」
「お店みたいじゃん!」
「こんな趣味があったとは!」
私の部屋は子供の頃からコツコツ集めていた大好きなアメコミヒーローグッズで溢れていて、部屋に入るやいなや同期達はまずそれにリアクションを取ります。
女性も2人居ましたが、意外と私のこの趣味に対して好感触で、乾杯してからしばらくは、このフィギュア何だっけ?とか、あのポスターはどこで手に入れたの?とか色々食いついてくれて、悪い気はしませんでした。
「もうおつまみ無くなっちゃったじゃーん。だからもっと買った方が良いって言ったのにー。」
確かに最初から、お酒の量に対してつまみがえらく少ないな、とは思っていました。
「ごめん、言うこと聞いとけば良かったわー!この辺コンビニある?皆でおつまみ第2陣買いに行かね?」
「あるある、歩いて5分くらいの所にあるよ。」
飲み始めて約1時間後、私達は5人全員でゾロゾロとコンビニに行くことにしました。
部屋を出て、廊下の先にある階段の方に歩き始めたその時……
しばらく会えてなかった黒いワンピースの彼女が階段を登ってきて、こっちに向かって足早に廊下を歩いてきます。
やっぱり2階の住人だったか!
心の中でガッツポーズしつつ、すれ違いざまに私から「こんばんは。」と声をかけるも、なぜか彼女はこちらに目もくれず、無言で通り過ぎていってしまい、とてもそれ以上声をかけられる空気ではありません。私は1人振り返り、彼女の行き先を目で追いました。
すると、私の部屋の1つ奥の角部屋、毎晩呻き声が聞こえるあの部屋に彼女が入っていったのです。
……えっ、あの人が隣人!?
何の事情も知らない同期達をよそに私の鼓動は速まります。想いを寄せていた人が隣に住んでいたという事実と、あの気味の悪い呻き声との折り合いがどうにもつきません。
「ねぇ!何やってんのー?」
同期に呼ばれてハッと我に帰ると、先頭を歩いていた私はすっかり取り残されていて、お喋りしながら階段を降りて行く同期達を追いかけました。
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