新居

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なんとも言えないモヤモヤを抱えつつ買い物を済ませ、部屋に帰ってきた途端、1人がこんな事を言いだしました。 「今日心霊特番があって、俺、予約録画してるんだけど、もうそろそろ始まるからここで皆で見ない?」 提案した彼のホラー好きは同じ部署の誰もが知っています。 「え、まじ!?怖いよー。」 「絶対怖いし!帰ってから思い出すじゃーん。」 賛成も反対もせず“怖い”とだけ繰り返す女性陣。 「俺は全然良いと思うけど?」 映画やドラマとは違い、その手の番組は飲みながら見ても盛り上がれるんじゃないかと思って私が賛成すると 「おっしゃ!家主が言ってるんだからもう決まりっしょ!」 言い出しっぺが強引にテレビをつけて心霊特番にチャンネルを合わせる。いざ見始めると、なんだかんだ女性2人もノリノリで、皆であーだこーだ言いながらワイワイ楽しんでいました。 番組は、怪現象に悩まされている一般人3組の元に番組スタッフと霊能者が出向き、相談を聞いて様々な検証をするという3部構成で進んでいきます。 1組目、2組目と終わり、モザイクで顔の隠れた最後の相談者となる男性が話し始めます。 都内某所。6階建の新築マンションに引っ越した相談者は、引っ越し祝いの様子をカメラで動画撮影。 後日、動画を確認したところ、途中から自分が撮影した覚えの無い映像が差し込まれていて、それを見た日から良くない事が続いている。 男性の相談はこういった内容でした。 “CMのあと、制作スタッフが放送を躊躇った戦慄の映像、大公開!!” 大袈裟なナレーションとテロップで視聴者を煽り、番組はCMに入る。 「……あのさ、モザイクかかってても周りの景色とかマンションの感じを見たら絶対ここじゃないのはわかるんだけど、6階建の新築マンション、1人暮らし、引っ越し祝い……おまけに部屋番号までここと一緒だった。気持ち悪すぎだろ。」 私は今見ている番組と自分達の現状との妙なシンクロを、皆で分かち合わずにはいられませんでした。 「……アタシもそれに気づいて、途中から黙っちゃった。」 どうやら、その場に居た全員が途中からそのことに気づいて薄気味悪さを覚えていたらしく、何かを誤魔化すようにCMの間は皆で下らない話をしました。
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