●少女はいつもロンサムアイズ

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 歩道と車道を分ける白いラインの上を、はみ出さないように歩いていた私は、ふと目を上げた視界に入った、砂場と小さな樹脂製のすべり台しかない公園の、正にそのすべり台の上に、のりぃんがぼんやりと座り込んでいるのを見かける。  のりぃんは学校があまり好きではないらしく、誘っても来てくれることは少ない。あんなに居心地いいとこないのに、と私は力説するものの、どうも響いてはいないみたい。  まあそれぞれに、それぞれの生き方があるわけだし、私もそれ以上は干渉しないようにしている。でも今日は、おとといの「事故」の話の新しいネタがあったら聞いてみたくて、公園にちょっと寄り道してみることにした。  こんなところでぼうっとしてると、また近くの中学男子らにちょっかい出されるよ、とさりげなく声を掛けてみる。あれ、ほんとに座りながら寝てたみたい。私の方に顔をゆっくりと向けるけど、その両目はまだ閉じられている。  ちゃんとしてればかわいいのに、のりぃんはいつもこんなスローな感じだ。菊間のり、っていうのがほんとの名前だけど、間延びした動作や、いつも眠そうな表情から、のりぃんって呼ばれている。  もねちゃん、今日も学校行くのぉ、って眠そげに聞いてくるけど、そりゃそうでしょ。だめもとで誘ってみたけど、やっぱり駄目だった。まあいいんだけど。  私の名前は「彦見もね」。パパママは「もね」って呼ぶけど、チビの太一は「モネ蔵」「モネ吉」とか言ってくる。最近生意気なのよね。まだおねしょしてるくせに。  いやいや私のことはどうでもいい。立井須カンナの事について、ちょっと気になったから尋ねてみた。自分から飛び込んだって……それって自殺、ってこと?
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