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ヒットを実感したのは、次の次の日の放課後だった。ここ数日は用も無く学校の人気のない所に……でも遠くからは逆に見える、みたいな絶妙なスポットに、何するでもなく座り込んでいたりしてヤツの接触を待ってたりしてたんだけど、遂に来た。
「もねちゃん、って言ったっけぇ~」
うわぁ、きも。そんな声出すんだ。私は興味なさそうな目で、のそのそ猫背で近づいて来た韮瀬に視線をやる。いつもの無表情とは違って、顔の下半分にだけ歪んだ笑いを張り付かせたような、そんな本能的に受け付けない表情。へっ、へっ、という笑いなんだか呼吸音なんだかよく分からない音声を発しているけど。
直感きた。やっぱこいつだ。
「何だよ~、同じ教室にこんな綺麗なコがいるなんて気づかなかったよぉ、オレ学校じゃ陰キャぶってっからさぁ、孤高ぼっちっつーの? ヒトに興味ねぇ、ってかね」
こんな奴に。のりぃんは。
「もねちゃんもさぁ、割とぼっち好きだよねぇ~。いやあ気が合う気が合う」
こいつの声を聞いてるだけで吐き気がしてきた。でも私は無言で、向こうから切り出してくるのをひたすら待つ。
「気が合うよしみでさぁ……激ハイになれるクスリ、あげよっか? それでオレとフィーバーしない?」
いきなり来た。クスリ。クスリね。何だそんなことだったの。何がフィーバーだよ。ふざけやがって。
「……」
感情を殺したまま、承諾も拒絶も示さないまま、私は、つ、と校門へ向けて歩き出す。後ろからヤツがよたよたついて来る気配を感じながら。
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