340人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
「あいつ、毎度よくも飽きずに竜也につっかかってくるもんだよなあ」
泰士がしみじみとした様子で言うが、その毎度つっかかられている方としては、たまったものじゃない。
「何がダメなんだろう?
俺ってジェイに何かしたっけな?」
俺が腕を組んで首を傾げていると、ルーシーがクスクスと笑う。
「その態度じゃない?
リュウヤって、どこか余裕があるように見えるんだよね。
みんなが必死に踊っていても、いつもリュウヤだけは必死感がないというか。
それがジェイの気に触るんじゃないの?」
「ええ!?俺はいつも真剣に踊ってるよ!
ディーナに気に入られているとか、まだ会った事もないし、そんな事でターゲットにされても困る」
俺はみんなの足を引っ張ってはいけないと思って、いつも真剣に踊っている。
それに、俺たちをYouTubeで見出だして呼んでくれた、全米の歌姫であるディーナ本人とは、本人のスケジュールが忙しすぎて、まだ会った事はないのだ。
むしろ本当にここにいてもいいのか、俺の方が不安で仕方がないというのに。
ルーシーはそんな俺を見て、困ったような顔になった。
「ジェイも不安なんだよ。
ディーナのさじ加減一つで私たちの進退が決まるからね」
「それならば、俺も不安だよ。
竜也はいいけど、俺はついていくのがやっとなんだからさ」
泰士が頭をガリガリと掻く。
「泰士までそんな事を言う。
俺だって、ディーナがどう思っているか不安だよ」
「まあ、私たちは全員、ディーナに選ばれた名誉あるダンサーなんだから、ディーナと一緒のステージに立つ時までに完璧に踊れるようにしっかり練習しておくしかないね」
ルーシーがまとめたところで、俺たちは頷き、練習に戻るのだった。
最初のコメントを投稿しよう!