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ディーナは俺の長い話を休憩もせずに聞いてくれた。
そして、全てを話し終えた俺は、コーヒーを作ってディーナへ渡す。
『聞いてくれてありがとう。ディーナ』
『ええ…』
ディーナは温かいコーヒーをゆっくりと飲み、ふーっとため息をついた。
『驚いたわ。竜也がミステリアスなのは、そういう経験をしたからなのね。
強さの秘密もわかった気がするわ』
『ミステリアス?そう思っていたの?』
『ええ。スタッフたちもみんなそう言っているわよ』
『まさか!そんな風に思われていたなんて!』
俺もコーヒーを飲みながらディーナと笑う。
そして、一番ディーナに言わなければならない事も、今ならば言える。
『ディーナ…その…この前はごめん。
俺、あれから色々考えたんだ』
『あー、私こそごめんなさい。
リュウヤの気持ちを考えていなかったわ。
いいのよ、もう忘れて!
私もちょっとどうかしてたと思うわ。
結婚なんてまだ『ディーナ』』
『俺と結婚して下さい』
慌ててディーナの言葉に被せて言った。
『…早いと思うのよ…』
驚いて目を見張るディーナに俺は告げる。
『俺と結婚して下さい。ダイアナ』
俺はディーナの左手を取り、薬指の先へキスをした。
『…どうして?』
俺が顔を上げてディーナを見ると、ディーナは俺を見つめて呟いた。
『俺はダイアナよりも年下だし、収入も低いただのバックダンサーだ。
でも、ダイアナを好きな気持ちは誰にも負けないし、これからもずっと一緒に過ごしたいのは誰かと考えたら、ダイアナだった。
俺はダイアナと一緒に人生を送りたい。
こんな俺でも、ダイアナと結婚したら、ふさわしいパートナーだと言われるように頑張るから、どうか俺と結婚して欲しい』
一気に言うと、急に恥ずかしくなってきたのと、怖くなってきたのと、複雑な気持ちになって下を向く。
あえてダイアナ、と彼女の本名で告げたから、俺の本気度は理解してくれたと思うのだが…
『…』
ディーナからの返事がないので、上目遣いで見ると、ディーナの目からは大粒の涙が流れ落ちていた。
『ダイアナ!?』
慌ててティッシュを取り、ディーナの涙を拭くと、ディーナは微笑んだ。
『リュウヤって優しいよね』
そう言われて、俺は急速に体温が冷えるような感覚に陥った。
断られるのか。
『優しくないよ。気に入らないヤツには優しくしない』
頭があまり働かなくなってきた。
どこか遠くで物事が動いているような感覚になっている。
『私はリュウヤの優しさを独り占めしたい。
他の女性と話をしている所も見たくない。
リュウヤは私の物だわ』
遠くでディーナの声がするが…どう受け取ればいいんだ?
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