終着駅

2/11

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 ここは駅のホームの様だから、待っていればいずれ電車が来るだろう。  が、時刻表が文字化けを起こしている以上、いつ来るか分からない。  ……暇だ。  眠ってしまおうか。  どうせやる事も、やれる事も無いのだし。  目を閉じる。  呼吸を整える。  …この世界で眠るのって、不思議な感じだ。  そもそも睡眠という行為が出来るんだろうか? 「眠れますよ。この世界でも」  声がした。  目を開けて、声のした方へ視線を向ける。  先程の自販機の前。  そこには、無表情の女性が一人。  それらしい服を着ていたから、駅のホーム員だと思う。 「…僕の思っている事、分かるんですか?」 「いえ。  ただ眠そうにしているのに苦い顔をしていたので、そう思っているのではないかと思いまして」 「ああ、なるほど」  女性が自販機のボタンを押すと、ガシャンと音を立てて飲料が落ちて来る…僕と同じ、ブラックコーヒーだ。 「隣、良いですか?」 「どうぞどうぞ」  女性は僕の横に座って、缶コーヒーを一口。  ほぅと表情が一瞬崩れ、僅かにではあるが、嬉しそうに口角が上がった。 「コーヒー、お好きなんですか?」 「ええ。  生前は父がコーヒー農園を経営していましたから」 「というと、あなたも死者ですか?」 「はい」 「てっきり天使様か何かかと…。     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加