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終着駅
ぽつんと、駅のホームがあった。
広大な海の、真っ只中。
…晴れ渡る空を鏡の様に反射する、凪いだ海の、真っ只中。
そこに、辺境の地にある様な、小さな駅のホームがあって。
僕は駅のホームの、簡素な長椅子に、座っていた。
…ここは、どこだろう。
ここに辿り着くまでの事を、回想する。
確か僕は、病室のベッドで寝ていて。
不意に、心臓が痛み出して。
その痛みに、耐える事が出来なくて。
それで、僕は。
…ああ、それで、僕は。
…じっとしていても始まらない。
立ち上がって、周囲を探索した。
「駄目だ…」
結果として、何も分からなかった。
この駅のホームには、駅のホーム名らしきものも、時刻表らしきものもある。
けれど、書かれている文字全てが文字化けを起こしていて、何も読む事が出来なかったのだ。
長椅子の近くに、全てが文字化けした自販機がある。
試しに缶コーヒーと思われる飲料のボタンを押したら、ガシャンと缶飲料が出て来た。
プルタブを開け、飲む。
…極々普通の、飲み慣れたブラックコーヒーだ。
さっきまで座っていた長椅子に座って、空を見上げる。
…暇だ。
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