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プロローグ
この国には、古くから龍にまつわる伝承が存在する。
建国の英雄シグミュンドが龍たちを北の地に追いやったこと。
彼等がスケジと呼ばれる山々になったこと。
そして、今もそこで龍の末裔が生きているということ。
龍については、もう1つ言い伝えがある。
「龍の血を飲めば不老不死となる」
そして、シグミュンドは龍たちの長フェフニアの血を飲んで不老不死となり、今でもスケジの何処かでこの王国を見守っているのだと。
300年以上前、まだ錬金術が全盛を極めていたような時代に、王があるお触れを出した。
「スケジに行き龍の血を王の元に持ち帰った者には、無限の富と栄光を与える」
当時、多くの者がこれに挑み、殆どが生きて帰ることはなかった。スケジの過酷な環境に耐えられなかったのか、オオカミの餌になったのか、あるいは龍に殺されたのか。それは分からない。それでも、このお触れは王の死後もその効力を持ち続けた。やがて、龍の血を求める旅フェーデの挑戦者は、シギュルズと呼ばれるようになった。
龍の血を持ち帰れば、莫大な富と栄光を得られる。しかしそれは、龍の血を手に入れるまで王国に踏み入れることを許されないという、重い代償を伴うものとなった。
ミズゲルズ王国の北端に位置する街、ヒミンボルク。今は静かなこの街は、かつて旅の起点として賑わっていた。街の奥には高峻なスケジの山々が聳える。
ヒミンボルクには、音楽宿と呼ばれる特別な宿がある。普段は客が泊まることはない。そこに泊まれるのは、シギュルズだけ。宿の女将はヴェルクーレと呼ばれ、旅立つシギュルズと最後の一晩を共に過ごす。
今となっては、シグミュンドの伝説を信じている人はほとんどいない。それでも、時々シギュルズがやってくる。
そして、未だに本物の龍の血を持ち帰った者はいない……
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