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「あらあら。なにも思い出せないだなんて…。辛いでしょうに。あの祠は、何百年も昔に作られたらしいけど…。私もね、詳しくは知らなくてね。とにかく、ここまで無事に来てくれてよかった。」
「あっ!あの。茶色くてツノのある…」
ミーナが慌てて聞こうとすると、ロゼは微笑んだ。
「茶獅子のことね。大丈夫。この家の外で待ってるわ。滅多に人には懐かないのよ。主人も驚いていたわ。」
「茶獅子…!あの子がここまで乗せてきてくれたんです!」
「まぁ!ますます驚いた!」
ロゼは立ち上がると、キッチンへ向かった。
鍋を火にかけると、ミーナを見て微笑んだ。
「お腹がすいたでしょう。野菜でシチューを作ったの。パンもあるわ。」
ミーナは、ロゼの優しさと、おいしい匂いと、安堵とで、ポロポロと泣き出した。
「っ。すみません…私ほっとして…」
「辛いわよね。今日はうちでゆっくり休んで。主人は村の寄場に泊まってもらうから。明日、村長のところへ行きましょう。」
ミーナはパンをちぎると、シチューに付けて食べた。
以前、このようにして食べたような気がした。
何日ぶりかもわからない食事。
驚くほど美味しかった。
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