第1章 1.森の中から

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───2日前。 「頭…いたい。」 ミーナは目を覚ますと体を起こし、周りを見渡した。 そこは古い木造の祠のような場所。 物音ひとつなくがらんとしているが、何かを祀るための横長の台のようなものはある。 埃や落ち葉が入り込んでいて、随分人の出入りがないことが見て取れた。 外へ繋がるのであろう格子状の扉の方からはうっすらと光が差し込む。 「え…ここ、どこ。私…あれ?…」 「なにもわからない…」   ミーナは今にも泣きだしそうに、よたよたと扉の方へ向かった。 扉を開けると、そこは森の中だった。 風で木々の揺れる音が鼓膜を揺らす。 「だれかっ!だれかいませんか!だれか」 我慢出来ずにミーナの目から涙が溢れた。 外へ出ても返事はなく、人の気配もない。 「…」 日がだいぶ高くなった頃。 泣き疲れたミーナは、祠の前にある石段に座っていた。 (川の音がする。) ミーナは音のする方へ歩き始めた。 のどが乾き、お腹も減ってきた。
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