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大治郎「恐らく、明日に開催を控えたイベント『オエドせれもにぃ~』の観光客に混じっ
てやって来ているはずだ。開催地のオエドへ向かってほしい」
夜左衛門「なるほど。承知つかまつった。『桃太郎』の称号に懸けて、必ず退治してくれ
よう」
夜左衛門、鋭い眼光。
9 民宿「かなぼう」・外観(夜)
巨大な五重塔や、煌びやかな明かりに照らされた建物が乱立する町並みの中、ひっそ
りと佇む落ち着いた木造の建物。
看板には「民宿かなぼう」と表記が。
10 同・厨房
鍋がコトコトと沸騰、そのだし汁の味をお玉ですくって確認する鬼ヶ藤力己
(71)。頭には2本の角が生えている。
力己「……よし」
その横で野菜を洗っている壱太郎。
壱太郎「リキさん、話聞いてた?」
力己「ああ、オーディションの話だろ。何回目だ。もう忘れろ」
壱太郎「でもやっぱり納得できなくてさぁ」
力己「それより壱太郎、あの『オエドなんとか』ってやつ、参加するのか?」
壱太郎「『オエドせれもにぃ~』な。もちろん。なんで?」
力己「あんな薄っぺらいもん、やめとけ。昔はこの国はもっと威厳があったんだ。それぞ
れが誇りを持っていた。己を信じ、力を信じ、高見を目指して切磋琢磨しあう。俺たち
鬼は、そんな人間を気に入って認めたんだ。それなのに今と来たら。俺も鍛冶屋の頃は
な……」
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