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〇商店街(昼過ぎ)
下校の学生が多くなり賑わう商店街――ゆっくりと商店街を抜けていく三人――三人の先に手を振る人物。
八百屋のおばちゃん(八百屋)
「あら、さくらちゃん! お帰りなさい。枩葉君もお疲れ様。」
桜母 「ただいまっす、おばちゃん。」
枩葉 「お疲れ様です。」
八百屋 「……!? さくらちゃん、枩葉君。そ、その子……」
と、フーラを見つめる――手足はプルプルと軽く震えている。
桜母 「こちら、フーラちゃんっす。今ちょっと訳あって保護して……」
八百屋 「いいのよ、隠さなくても! 愛のカタチっていうのは人それぞれだけど、わざわざ隠すことなんてないのよ。実は子供がいましたって、堂々と言えばいいのよ。」
桜母 「え、子供!? 私と先輩の!? いやいや、違うっすよ、信じてくださいっす!」
顔を真っ赤にして否定する桜母、枩葉に助けを求める。
桜母 「先輩、離れて見てないで誤解を解くの手伝ってくださいよ。」
枩葉 「たぶん二人がかりでも無理です。先言ってるんで、気が済んだら帰ってきてください。さて、何か買ってから戻るか。」
桜母を置いて歩き出す枩葉とフーラ。
〇交番(昼過ぎ)
桜母 「ただいまっす。もう疲労しかないっす。」
大量の野菜を両手で抱えて帰って来た桜母、顔はげっそりとしている。
枩葉 「お疲れ様です。両手の野菜、すごい量ですね。」
枩葉、フーラ、休憩スペースで途中で買ったお菓子を食べている――桜母、キッチンに向かい貰い物を冷蔵庫へ――興味の湧いたフーラ、桜母の隣で野菜を観察している。
桜母 「おばちゃんが、愛する旦那さんのためにって言って貰ったんすよ。やばいっす、消費しきれる気がしないっす……」
枩葉 「八百屋のおばちゃんは一度思い込みが激しいから、説明するだけ無駄なんですよ。」
ふと、交番の出入り口に視線を向ける――視線の先には風船を子供たちに配る着ぐるみと引率係の男。
枩葉 「着ぐるみ……? 今日って平日だよな?」
キッチンから顔を出すフーラ――フーラに気づいた着ぐるみ、フーラを手招きする。
フーラ 「何あれ……怖い。何で手招きしてるの?」
枩葉 「風船を配ってるみたいだ。」
フーラ 「風船……?」
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