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枩葉 「そう、あれ。」
と、風船を指さす――興味を示すフーラ――しかし、風船を貰いに行く勇気がない。
枩葉 「……ひとりで行けないなら一緒に行くか?」
フーラ 「はあ!? 別にもらってくるだけでしょ。一人で行けるし。余裕だし!」
と、速足で着ぐるみの元へ。
フーラ 「はい、来てやったからその風船とやらを渡して。」
着ぐるみ、嬉しそうに動き回る――そして、風船を二つ渡す。
フーラ 「あれ? 二つ? 貰ってもいいの?」
着ぐるみ、うんうんと頷き、枩葉のほうを指さす――意図を理解したフーラ。
フーラ 「ああ、なるほど。ありがとう、着ぐるみさん。」
と、風船を持ち交番にかけていくフーラ。
枩葉 「お、二つ貰ったのか。よかったな。」
フーラ 「はい、これあげる。ご飯の御礼。」
枩葉 「え? ……ありがとう。」
と、ぽかんとする枩葉――ふと風船を見上げる。
枩葉 「風船か……」
× × ×
都心部の動物園――幼き日の枩葉と祖父母、園内を回っている――枩葉の視界、風船が木に引っ掛かり肩車をして取ろうと試みる親子の姿――親子、無事に風船を取り、笑い合っている。
枩葉 「ねえ、おじいちゃん、おばあちゃん。何で僕にはお父さんもお母さんもいないの?」
× × ×
我に返る枩葉――首を横に振り過去を振り払う――その様子を見て不思議がるフーラ。
フーラ 「どうしたの? そういう遊び?」
枩葉 「ンなわけあるか。虫が顔の近くをうろちょろしてたんだよ。」
フーラ 「嘘!?」
おびえた様子で周囲を見渡すフーラ。
枩葉 「何やってんだ?」
フーラ 「虫っ! 虫がいるんでしょ? 怖いけど、さっさと始末しないとこっちがやられるもの。」
フーラの言葉に耳を疑う枩葉。
枩葉 「なんだよ、虫ごときで。俺が見たのは小さい奴だぞ。」
枩葉M 「まあ、嘘なんだが……」
フーラ 「いやいや、大きさなんて関係ないわよ。時間がたてば大きくなるんだから、今のうちに退治しなきゃ。」
食材の整理が終わりキッチンから戻ってきた桜母。
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