一話 この世界で一人ぼっちの君

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枩葉  「そう、あれ。」       と、風船を指さす――興味を示すフーラ――しかし、風船を貰いに行く勇気がない。 枩葉  「……ひとりで行けないなら一緒に行くか?」 フーラ 「はあ!? 別にもらってくるだけでしょ。一人で行けるし。余裕だし!」       と、速足で着ぐるみの元へ。 フーラ 「はい、来てやったからその風船とやらを渡して。」       着ぐるみ、嬉しそうに動き回る――そして、風船を二つ渡す。 フーラ 「あれ? 二つ? 貰ってもいいの?」       着ぐるみ、うんうんと頷き、枩葉のほうを指さす――意図を理解したフーラ。 フーラ 「ああ、なるほど。ありがとう、着ぐるみさん。」       と、風船を持ち交番にかけていくフーラ。 枩葉  「お、二つ貰ったのか。よかったな。」 フーラ 「はい、これあげる。ご飯の御礼。」 枩葉  「え? ……ありがとう。」       と、ぽかんとする枩葉――ふと風船を見上げる。 枩葉  「風船か……」       ×      ×      ×       都心部の動物園――幼き日の枩葉と祖父母、園内を回っている――枩葉の視界、風船が木に引っ掛かり肩車をして取ろうと試みる親子の姿――親子、無事に風船を取り、笑い合っている。 枩葉  「ねえ、おじいちゃん、おばあちゃん。何で僕にはお父さんもお母さんもいないの?」       ×      ×      ×       我に返る枩葉――首を横に振り過去を振り払う――その様子を見て不思議がるフーラ。 フーラ 「どうしたの? そういう遊び?」 枩葉  「ンなわけあるか。虫が顔の近くをうろちょろしてたんだよ。」 フーラ 「嘘!?」       おびえた様子で周囲を見渡すフーラ。 枩葉  「何やってんだ?」 フーラ 「虫っ! 虫がいるんでしょ? 怖いけど、さっさと始末しないとこっちがやられるもの。」       フーラの言葉に耳を疑う枩葉。 枩葉  「なんだよ、虫ごときで。俺が見たのは小さい奴だぞ。」 枩葉M 「まあ、嘘なんだが……」 フーラ 「いやいや、大きさなんて関係ないわよ。時間がたてば大きくなるんだから、今のうちに退治しなきゃ。」       食材の整理が終わりキッチンから戻ってきた桜母。
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