一話 この世界で一人ぼっちの君

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桜母  「まるで魔法って感じでしたよ。」 枩葉  「これ、フーラが……?」       ぽつぽつと雨が降り出す――すぐに大降りに。 フーラ 「――そうよ、すごいでしょ。」       頬を伝うものが涙なのか雨なのか判別つかない――フーラのローブ姿、熱の失った目が印象的に見える枩葉。 枩葉  「フーラ……」 ○交番(昼――10時)       交番の扉を開けるフーラ――伸びた男Bを抱えて戻る桜母――枩葉の姿はない。 桜母  「いや、ひどい雨っすね。あ、フーラちゃんこれ使ってくださいっす。」 フーラ 「――ありがとう。」 桜母  「……」       明らかに元気のないフーラを心配する桜母――フーラ、無言のままタオルで髪を乾かす。 フーラ 「――寝る。」 桜母  「あ、はい! おやすみなさい、っす……」       ×      ×      ×       パトカーが走っていく――それを見送る桜母――反対方向からは着替えを終わらせた枩葉、戻ってくる。 桜母  「先輩、お疲れ様です。」 枩葉  「さくらさん、フーラは?」 桜母  「奥で寝てるっす。」       部屋を覗く二人――背を向けて寝ているフーラ――実は起きている。 桜母  「先輩、フーラちゃんは本当に魔法使いなんすかね……?」 枩葉  「さくらさん、どういうことですか?」 桜母  「いや、その……フーラちゃんには申し訳ないんすけど、ちょっと怖いっす。」 枩葉  「それはもうフーラを同じ人間として見れないってことですか?」 桜母  「違うっす! フーラちゃんはフーラちゃんっす! ……でも、壁を感じるっていうか作っちゃうっていうか。先輩はないんすか、そういう壁みたいなもの。」 枩葉  「――」       考え込む枩葉。 枩葉  「まあ、完全にないと言ったらウソですね。でも……」       突然起き上がるフーラ――背を向けたまま自身の身支度をする。 フーラ 「助けていただいて、ありがとうございました。もうお二人には会うこともないと思うので安心してください。」       淡々と告げるフーラ。 桜母  「フーラちゃん、いつから……?」 フーラ 「初めからです。」 桜母  「――!?」       桜母、うつむき反省する。 フーラ 「いいんです。私、お二人とは違うんで。」
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