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桜母 「まるで魔法って感じでしたよ。」
枩葉 「これ、フーラが……?」
ぽつぽつと雨が降り出す――すぐに大降りに。
フーラ 「――そうよ、すごいでしょ。」
頬を伝うものが涙なのか雨なのか判別つかない――フーラのローブ姿、熱の失った目が印象的に見える枩葉。
枩葉 「フーラ……」
○交番(昼――10時)
交番の扉を開けるフーラ――伸びた男Bを抱えて戻る桜母――枩葉の姿はない。
桜母 「いや、ひどい雨っすね。あ、フーラちゃんこれ使ってくださいっす。」
フーラ 「――ありがとう。」
桜母 「……」
明らかに元気のないフーラを心配する桜母――フーラ、無言のままタオルで髪を乾かす。
フーラ 「――寝る。」
桜母 「あ、はい! おやすみなさい、っす……」
× × ×
パトカーが走っていく――それを見送る桜母――反対方向からは着替えを終わらせた枩葉、戻ってくる。
桜母 「先輩、お疲れ様です。」
枩葉 「さくらさん、フーラは?」
桜母 「奥で寝てるっす。」
部屋を覗く二人――背を向けて寝ているフーラ――実は起きている。
桜母 「先輩、フーラちゃんは本当に魔法使いなんすかね……?」
枩葉 「さくらさん、どういうことですか?」
桜母 「いや、その……フーラちゃんには申し訳ないんすけど、ちょっと怖いっす。」
枩葉 「それはもうフーラを同じ人間として見れないってことですか?」
桜母 「違うっす! フーラちゃんはフーラちゃんっす! ……でも、壁を感じるっていうか作っちゃうっていうか。先輩はないんすか、そういう壁みたいなもの。」
枩葉 「――」
考え込む枩葉。
枩葉 「まあ、完全にないと言ったらウソですね。でも……」
突然起き上がるフーラ――背を向けたまま自身の身支度をする。
フーラ 「助けていただいて、ありがとうございました。もうお二人には会うこともないと思うので安心してください。」
淡々と告げるフーラ。
桜母 「フーラちゃん、いつから……?」
フーラ 「初めからです。」
桜母 「――!?」
桜母、うつむき反省する。
フーラ 「いいんです。私、お二人とは違うんで。」
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