一話 この世界で一人ぼっちの君

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本編 〇商店街(早朝、交番前)       交番の前で立ち尽くす枩葉――扉に手をかけ思いっきり引っ張る――  しかし、扉はびくともしない。 枩葉  「おい、またかよ……いい加減にしてくれ。」       顔見知りの中年オジサン、自転車に乗り交番前を通りかかる。 オジサン「おう、まっちゃん。また締め出されてるのか? 大変だね。」 枩葉  「はい。彼女にどう言ったらこれ直してくれますかね?」 オジサン「無理なんじゃねえか?」 枩葉  「――ですよね。」       と、再び視線を交番に戻す――壁の塗装は剥げ、ところどころヒビが入ってきている。 オジサン「まったく、このぼろ交番で寝泊まりなんていう根性がすごいよ。俺は絶対無理だわ。」 枩葉  「まあ、築70年以上の物件ですし、そろそろメンテナンスしないといけないですね。」 オジサン「そういうのは早いとこやっといたほうがいいよ。崩れてからでは遅いからな。そんじゃ、仕事言ってくるわ。」       と、再び自転車をこぎだすオジサン。 枩葉  「気をつけて行ってらっしゃい。」       と、遠ざかるオジサンの背中に手を振る。 枩葉  「……さてと。行きますか。」       交番前に止めてある自転車にまたがり、走り出す枩葉。 〇住宅街(隣町、早朝)       息を切らしながら走るフーラ――後ろには体格のいい黒スーツの男が追いかけてくる。 男A  「待ちやがれ! ちょこまかと鬱陶しいな、おい!」 フーラ 「――」       主要河川に架かる橋に出たフーラ――フーラ、全速力では橋の上を駆ける――しかし、進行方向にもう一人、やせ形の黒スーツの男が道をふさいでいる。 男B  「はい、残念でした。」 フーラ 「――!?」       立ち止まり逃げ場を探すフーラ――前と後ろから迫ってくる男たち。 男B  「こっちには科学ってものがある。子供ごときが逃げ切れると思っていたのか?」 男A  「苦労かけさせやがって。さて、痛い目見たくなかったらこと聞いてもらおうか。」       じわりじわりとフーラに迫る二人――フーラ、二人から逃げるように橋の縁へ。 フーラ 「あんたたちに捕まるくらいなら――」       と、二人に聞こえない音量で呟く――橋の縁を上り、身を投げ出すフーラ――男たち、捕まえようとするが間に合わず。
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