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フーラ 「そんなこと言われても、気づいたらこの世界にいて、何にもわかんない状況で変な二人組に追いかけられて……何とか逃げ切れたけど、もう何が何だか――」
枩葉 「まるで異世界から来ましたって言い方するな。」
フーラ 「た、例えよ、例え。そこまで本気にしないで、ください。」
フーラ、押し黙る――枩葉、隣のキッチンへ――冷蔵庫からオレンジジュース(ペットボトル)を取り、部屋に戻ってくる枩葉。
枩葉 「そうか。まあ、これ飲んでひとまず元気出せ。」
フーラ 「あ、ありがとう……」
フーラ、枩葉からジュースを受け取る――しかし、飲みかたが分からないフーラ――ペットボトルを観察する。
フーラ 「……私、『オープネイション』使えないんだけど。」
枩葉 「は? 今なんて言った?」
フーラ 「だから、私『オープネイション』使えないって言ってるの。」
顔をしかめる枩葉。
枩葉 「え? 普通にふたを開ければいいだけなんだが。ちょっと貸してくれ。」
と、ペットボトルを受け取る――ふたを開ける。
フーラ 「うっそ……!?」
枩葉 「いや、普通のことなんだが……」
と、改めてジュースを渡す――お礼をいいジュースを飲むフーラ。
フーラ 「美味しい。こんな新鮮な飲み物を、魔法を使わずに保存できるなんて。」
枩葉 「魔法?」
フーラ 「あっ、いや何でもない、です……」
気まずい沈黙
枩葉 「まあいいや、まだ名前聞いてなかったな。君の名前は?」
フーラ 「フーラ。フーラ・ハラック……」
再び気まずい沈黙――交番の外から自転車が止まる音。
桜母
「先輩、ただいま戻りましたっす。あっ目が覚めたんすね。良かったっす。」
桜母、交番の入口から入ってくる――すぐに手に持った大ぶりのメロンを掲げる。
桜母 「先輩先輩、見てくださいこの大きなメロン。八百屋さんからいただっす。熟すまでもう少しかかるそうなので熟したら三人で食べましょう。」
机の上に乗る桜母メロンを天井の使えなくなっている蛍光灯に引っ掛けぶら下げる。
枩葉 「……何で天井なんですか?」
桜母 「聞いてくださいよ。八百屋さんが言ってたんですけど、植物って保存するときは元々生きてた環境に近づけるといいらしいっす。」
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