わたしには友達が必要だった

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「丹花(にか)、何処にいるの?」  広い屋敷を橙色の髪の男が探し回っている。 「ゼンマン、ここよー」  ふよふよと廊下を滑る様に移動しながらわたしはその声に答えた。 「こんな所に居たのか。いきなり成仏したのかと思って焦ったよ」  そう。私は気まぐれで描いた魔法陣により召喚されたゼンマンとの契約で命の炎が消えた。  わたしはもうこの世には居ないハズなのだが、何故だか浮遊霊としてまだこの屋敷に留まってゼンマンと暮らしている。  自分でもかなり間抜けな死に方だなとは思っている。  でも、自分の選択を間違っていたなんて決して思わない。  だって、一人では広すぎたこの屋敷に一緒に住んでくれる人(正式には人ではないが)が出来たのだもの。  わたしには友達が必要だった。  だからその為にわたしは命を終わらせた。  それだけで、理由は十分だ。 「あ、そうだゼンマン。わたし、いい事を思いついたのだけども」 「え、何々?」  この広い屋敷にさらに人が増えるのは数ヵ月後のお話。
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