一章

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俺は自分で言うのも何だけど、そこそこ顔も愛想もいいので女の子に困ったことがない。 いつも向こうから寄ってくる子とテキトーに付き合っていたのだが、たまたま当時はカノジョが居なかった。 午後最後の授業が始まる前、ぼんやりと自分の席に座っているところだった。顔の横から可憐な声がした。 「なっ難波(なんば)くん!」 声の方向を見上げると、少しほおを紅潮させた女子が立っている。 同じクラスの清藤(きよふじ)さん。彼女は両手で俺のスマホに付いてたストラップを差し出す。 「あのっ……これっ!」 どうやら移動教室の際に落としたらしい。別に悪いことをした訳でもないのにぷるぷる震えていた。 「……あぁ、ありがとう」 地味目な雰囲気だけど、真ん丸な目が子うさぎみたいで可愛らしい。 「……あっ」 ストラップを受け取る時に手がちょっと触れ合って、彼女は自分の手を反射のように離した。 顔全体を真っ赤にして、そのまま固まっている。
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