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……この子多分俺のこと好きだな。
俺は彼女の小さな手をがっしりと握り締める。彼女は真っ赤な顔のまま目をぱちくりさせた。その手は振り払われないのを確認して俺は彼女に話しかける。
「清藤さん」
「はっ……はい!」
彼女は背筋を正した。
緊張し過ぎだろ。
俺の守備範囲はもっと色っぽい男慣れした子だけど……こんな純粋そうな子も、悪くないかもしれない。
「……俺と付き合わない?」
「はい! ……え!? うっ嘘!」
俺は状況について行けてない彼女に向かってニヤリと意地悪く微笑む。
「今『はい』って言ったよね。……よろしく」
「……難波くん、わたしのこと、好、きなの?」
彼女は眉をへの字にして尋ねてくる。可愛いとは思ってるけど、実際のところ俺すらよくわからない。
「んー? 可愛いと思ってるよ? これから好きだって言わせてみてよ」
俺は笑顔で押し切った。彼女の色白の肌はもう見る影もない。やっぱりこの子にチャラ男は扱いきれないかな?
「よ……よろしくお願いします……!」
少し手が握り返される感覚に驚いた。と思ったら授業開始のチャイムが響く。俺は慌てて自分の席に戻ろうとする彼女に向かってにっこり微笑んだ。
「よろしくね」
そして身を乗り出して耳元で囁く。
「ことの」
彼女の背がピンと伸びた。カチコチとした動作で席に戻った彼女を見て、俺は笑いを噛み殺す。
……初心にも程があるな。
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