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なんでかは分からないけれど、一時その噂が私の周囲で流行った。 火のないところに煙は立たない。 もしその言葉が体現されたのなら、それはもう降参するしかない。 噂の内容は、クラスメートのとある男子が私のことを好きだというものだ。それを発端に、気づけば付き合っているというものに転じていた。 根も葉もない噂だ、と断言したいところなのだけれど、どうなのだろう。 私はその彼に好意を持っていた。けど、それを打ち明けるのは恥ずかしいから友人にすら言っていない。なのに、そんな噂が立った。しかも、現状より事態が大きい。 その噂が立ったのはもう半年ぐらい前のことだけれど、あの時はほとほと疲れた。 周りも嘘だと分かっていたのだろうけれど、クラス全員といってもいいほどが面白がった。おかげで揃って総務委員に推薦されてしまい、他の候補者がいなくて、今の総務委員は私とその彼だ。 何がひどいって、私自身まんざらでもないことだ。 その行為が周囲を助長させてしまったのかも知れないけれど、だって私はその気が合ったのだし。 そう。私は別に悪い気はしていなかったのだ。 はやし立てられたのは恥ずかしかったけれど。なるべくみんなに流されている風を装って、便乗していた節は否めない。 向こうもそうだったのだから、そりゃだれもやめようとは思うまい。 からかわれていた時、なぜか彼は嫌そうな顔をしなかった。 でも周囲に気遣える人だったから、内心は嫌だったのかも知れない。なんて思うけど、でも本当にそうならばさすがに友人にはやめてくれと言っていただろう。 でもその彼の友人達がむしろ積極的に茶化してきたということは、もしかして杞憂はさすがに身の程知らずかも知れないが、でもそちら寄りのことを想定してもよかったのかな――なんて。 もちろん、誰かに言えることはなかった。
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