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こんな形で再会するなら会いたくなかった。
いつも通りの仕事。いつも通りの場所に行っただけ。違うのは……彼女がいたこと。
川島真帆。私の初恋の人。忘れられなかった人。
短めで茶色く染めた髪の私とは対象的にロングストレートの黒髪。
平均身長の私に比べて背が低い。
歩いてきた私に気づいたらしく、真帆も真帆で驚いた様子だ。
「ひょっとして、渚なの? え、でも聞いてた名前と……」
私の本名は片岡渚。仕事で名乗っているのはイサミ。ようは源氏名だ。全く違う名前だから無理もない。
「……そっちだって、その、苗字違う……じゃん」
私が聞いていた名前は『泉 真帆』。そう。真帆は珍しい名前でもないし、そういう名前の客を相手にしたことがある。今回も警戒はしなかった。ただ、それだけ。
私は小さく深呼吸をしていつも通りの段取りに入った。
「それじゃあ、料金の方をお願いします」
真帆は目を丸くして、一瞬、何を言われたかわかっていない様子だったが、すぐに把握したらしい。
「お金……取るんだ……」
「それはそうだよ。お金を払って、二時間だけ女の子と恋人になる遊びなんだから」
私はさらにいじわるっぽく言い放った。
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