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「キャンセルすることも可能ですが、いかがなさいます?」
そうなると私の今日の給料は無しになる。そっちの方がマシだ。
真帆の方もキャンセルするだろうと信じていた。でも、その期待は裏切られた。また、彼女は裏切った。
「ううん。キャンセルはしない」
「…………。それじゃあ、行きましょうか」
私は指定されたホテルに案内するため歩き出した。見慣れた光景だとはいえ、今は眩しく光るネオンが憎らしく思える。
「あの、渚……」
「イサミです」
真帆は何か言いたげな顔をしていたがホテルに着くまでお互いに口を開かなかった。
フロントで会計を済ませ、部屋に入り、荷物を置き、手を洗い、ソファに座り、そして
誰に閉じられたでもない口をお互い解放させた。
「なんで渚なの?」
「どうして真帆なワケ?」
そもそも、真帆は、普通に男と付き合っていたはず。それもあって必要以上に警戒なんかしなかった。それなのに。
「真帆、いつから『女』になったの」
「アタシはもともと女よ」
「違う。恋愛対象の話」
女の子が女の子にサービスする仕事に就いてだいぶ慣れてきたし、恋愛対象女性とか関係無しに来る人がいるのは充分にわかっていることだ。だが、相手が知り合い。ましてや、私を振った女だ。聞きたくもなる。
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