会いたくなかった

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「興味本位で来たら、渚がいるなんて思わなかった」 「私も」 「でも、本当は嬉しかった。女の子とはいえ、少し不安だったし、渚で良かったって思ってる。久しぶりに会えたし」 「それはどうも」 「渚。今でも私のこと好き?」 「…………」  私は何も言わずうつむいた。口に出したくなかった。  私の手の上に真帆の小さな手が重なる。   真帆は私の気持ちを知っている。    「いいの?」   私は思わず訊いてしまった。不安だったから。 「いいよ」  五年前の彼女がそこにいた。  あの時も真帆は私の気持ちを知っていた。  でも、他の男と付き合った。そして、別れたことを聞かされた。  優しく頬を触り、どちらからともなく静かに唇を合わせた。  バスローブ越しに感じる彼女の体温。  長いようで一瞬だった五年。  明かりを消しながら、真帆をゆっくり押し倒す。  真帆の身体が少しこわばっているのがわかる。 「アタシ、女同士のやり方わからないから……お願い」 「真帆は何もしなくて大丈夫だから」  ふたりの再会を表現するかのように。  時間の隙間を埋めるかのように、深い口付けを交わす。  何人もの相手としてきたはずなのに、まるで初めてしたかのように身体が熱い。 「女の子って柔らかいんだね」     
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