会いたくなかった

7/11
前へ
/11ページ
次へ
 私の下で真帆がひとり言のように呟いた。  バスローブに手を入れ、彼女の胸の頂を触れたとき、彼女はビクッと身体を震わせた。 「渚……上手いね」  一瞬、手が止まりそうになった。誰と比べて上手いのだろう。私は誰と比較されているのだろう。   そんなことを考えそうになるのを振り払うかのように、バスローブを脱がせた。  薄暗く見える一糸まとわぬ彼女の身体が愛おしいと思う反面、憎らしいと思えた。   ああ。……どうしてこんなに綺麗なんだ。  白くて細くて、女の私が抱いても折れそうな錯覚を引き起こす。  女だから彼女に触れられなかった。女だから触れられた。 「渚だけ着てるのズルいよ」  気が付くと真帆は状態を起こし、私のバスローブを脱がせていた。 「ごめん」   私の背中に手が回され、真帆は耳元で囁いた。 「ねえ。続き……して」   私は無言で頷き、誰にも渡さないとばかりに彼女を抱きしめた。  肌と肌が直接触れ合う。くすぐったくも心地いい感触。  今、このときだけは、私のことだけを考えていて欲しい。 「ああ。真帆……」  好きだ。大好きだ。心の中で何度も叫んだ。  真帆の唇からも愛おしげな吐息と声が洩れる。  さっきまでの緊張がお互い興奮に変わっていた。     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加