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本当に故郷は滅びたのか。父と養母、それから会ったこともない異母兄弟は本当に死んだのか。アサレラがセイレム唯一の生存者だとトラヴィスは語った。
それが真実であるかどうか、おのれの目で確かめてやろう。
アサレラは決然と、かつての故郷へ向かって歩き出した。
セイレム村に残されたのは、焼かれた地面へ倒されたすすけた木と、積み重なった瓦礫であった。
やはりというべきか、焼け爛れた死骸は片付けられている。村の中を進むアサレラの影が伸びる。
西へ傾いた日は、すべてを赤く染め上げている。あの、セイレムが滅びた夜のように。
わかっていたはずなのに、と、アサレラは臍を噛む。
あの夜、人も植物も建物も、すべてが魔物の炎の中に消えた。爛れた養母の傍で父が炎に包まれたのを、アサレラは目の前で見たのだから。
だが、アサレラは思わずにはいられない。他の村人はともかく、父と養母には生きていてほしかった、と。
そうでなければ、いったいなんのために今まで生きてきたのだろう。十三年ぶりの帰郷は、彼らをおのれの手で殺すためだったというのに。
そのためにアサレラは剣を取り、魔物との戦いに身を置いていたのだ。いずれ来たる復讐の日のために。
アサレラは立ち止まる。村の残骸は落陽を受け、ただ佇んでいる。
この手はいったいなんのために剣を取ったのだろうと、アサレラは左手をじっと見つめた。
そこへ、鮮やかな黄色の花片が音もなく落ちた。
「…………花?」
視線をあげると、小さな黄色いものが、ひらり、ひらりとアサレラの視界を横切っていく。
アサレラは視線を上げた。青い空に映えるいくつもの鮮やかな黄色は、確かに花片である。
セイレムに残っているものなどないはずだ――ただ一人生き残ったアサレラの、遺恨を除いて。
なのにどうして、と舞い上がる花片を目で追っていると、なにかがアサレラのマントを引いた。
振り向いたアサレラの目の前に立っていたのは、アサレラより頭一つ分ほど背の高い、ひょろりとした男だ。
ゆるやかになびく長い髪は、夏に咲く花の色に似た薄紫色。
露出した額は白く、青みがかった緑色の目はどことなく憂いを帯びている。
黒く焼け落ちたセイレム村の無残な光景には到底似つかわしくない、端正な顔立ち。
おそらくアサレラと同年代であろうその男は、静かに立っていた。
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