第2章 ヴァラトヴァ司祭と弟子

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里長の息子は四十歳前後だろうか、里長が歳が行ってから出来た子だった所為か、我儘に育っている印象がある。 カラトは用意された朝食の席で、遠慮も気品もない食べ方をするその息子を見てそう思った。 何を思っても顔には出さない鉄面皮なスセンとは違い、思わず不快な顔をしそうになったカラトは、里長の息子カイジからそっと目を逸らした。 「そういえば、カラト司祭殿はいつお立ちの予定でしたかな?」 そのカイジに唐突に問い掛けられて、カラトは一瞬言葉に詰まる。 スセンにはまだ逗留すると言われていたが、表向きその理由がないことに気付いた。 「雨乞いが行われると聞いていますし、折角ですからそれが終わるまで滞在させて頂こうかと思っていたのですが。」 決め手に欠けるがこれで相手の出方は探れるはずだ。 「この里の雨乞いは神聖な儀式ですので、司祭と雨乞いの者のみで行われます。留まられても何も面白いことはありませんよ。」 言外に留まるなと言われているのだ。 すると、隣に座っていたスセンが突然咳込みだした。 「カラト司祭済みません、さっき濡れた所為か寒気が・・・食事も折角と思って頂いたのですが、気分が悪くなってきました・・・ちょっと失礼します。」 口元を押さえて後退るスセンに、カラトは調子を合わせる。 「これはいけません。話しの途中で申し訳ないのですが、弟子を部屋で休ませたいと思いますのでこの場は失礼します。」 一方的に告げると、何か言い掛けたカイジの言葉を聞かずにスセンに手を貸すと部屋を後にした。
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