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スセンの機転のお陰で何とか滞在を認められたが、仮病を疑われているのは間違いなく。
ここはひとつ、スセンに仮病では飲みたくないような苦い風邪薬でも飲んでもらおうと、カラトは里の外れに薬草がないか探しに行くことにした。
薬草を探すと言ったカラトに、里外れを勧めたのはスセンだったが、無かったら里外れに家を持つセネルトの司祭を訪ねてみればいいとも教えてくれた。
実は司祭の弟子でしかないカラトとしては、他神のでも、司祭の振りをして本当の司祭と話しをするのは気まずい。
スセンはそういうことには無頓着だ。
彼のことは信用しているし、司祭として尊敬できる師匠だと思うが、時々説明なく振り回されることと、結果的にいつも上手く収まる所為で、弟子の苦労を理解しないところが玉に傷どころか、ひびが入っているに違いないと思う。
ひっそりと溜息を漏らして、カラトは里外れに向かう。
スセンが言った辺りに差し掛かったところで、細い話し声が聞こえて来た。
「ヴァラトヴァの司祭様ですか?」
耳に飛び込んできた少女のものらしい声に、カラトは耳を澄ます。
「里長の家にご滞在だと思います。ただ、お弟子さんがお風邪らしいですけど。」
少女の声が心配しているような調子を帯びていて、カラトは驚いた。
それに一体誰と話しているのだろうか。
気になって近寄ると、木の陰に隠れていた少女が振り返った。
驚いたことに、頭に布を巻いて髪を隠した、あの雨乞いの少女だ。
「ヴァラトヴァの司祭様?」
問い掛けにカラトは笑みを浮かべて頷きながら、少女の話し相手を探したが、側には誰も居なかった。
「あのこれ。」
少女が手に持った包みをカラトに差し出してきた。
「これは?」
取り敢えず受け取りながら問うと、少女はさっと顔を赤く染めた。
「お弟子さんに、風邪薬。」
カラトは目を瞬かせる。
風邪薬が待っているとはスセンは言わなかったが、手間が省けたのは間違いない。
「里の人には言わないで。」
少女は不意に周りを気にしてそわそわし出す。
「ありがとう。」
そう笑顔で告げると少女はほっとしたように表情を緩めた。
少しだけ赤みを帯びたような茶色の瞳は、すっきりと細身な顔の中で、粒の揃った丸みのある雫石のように美しい。
頭の布に目を奪われていたが、良く見ると顔立ちの整ったかなりの美少女だ。
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