第1章 雨乞いの里

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カラカラに乾き切った田には、草の一つもなく、いびつなひび割れがいくつも出来ている。 固く踏み固められた畦道に座り込んで、それを見下ろしていたシオナは、丁寧に布を巻き付けた頭に手をやって、憂鬱な溜息を吐いた。 里人達が、もうすぐ井戸が枯れそうだと噂し始めたのは、三日程前のことだっただろうか。 里に最後に雨が降ってから、もう三月近くは経つような気がする。 里には三年から四年に一度、干ばつが訪れる。 その度に里では、風の神セネルトに雨乞いの儀式を行って、何とか凌いできたのだ。 今回ももうすぐ、養父であるセネルト司祭のクラムから声が掛かれば、シオナに拒否権はない。 乾いた風が吹いてきて、砂埃を舞い上げる。 黄色く霞んだように見える視界から目を逸らすように、シオナはぎゅっと目を瞑った。
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