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スセンの背負い鋏は、鞘から抜いた時には幅広で両刃の両手剣の体裁を取っている。
旅の道中、盗賊に襲われた時などは、彼は両手剣としてそれを使っているが、仕事として宣告を行った後に使う時は、剣を真ん中から二つに分けて二振りの片刃の直刀となるようだった。
カラトがこの直刀型の二振りを目にするのは、三度目だ。
そもそもが何かあってもギリギリまで剣を抜きたがらない彼の師匠だが、歳の割に腕前は確かだ。
盗賊や暴漢を含め、これまで出会ったどんな敵にも、スセンが苦戦しているところを見たことがない。
だが、人を殺める時の彼は驚く程真摯で、その行為や剣技に酔っている様子はない。
というか、時折嫌々熟しているような様子すら垣間見える。
カラトが八つも年下のスセンを師と仰ぎ、何があっても付いていく理由の一つはそれだった。
手を震わせながらナイフを突き出してきたクラムに、スセンは一歩下がって間合いを取ってから左手の剣を下から斜めに振り上げてナイフを弾く。
その隙に、右手の剣をクラムの喉元に突き付ける。
動きの止まったクラムの首に、戻した左の剣を当てて、喉元から外した右の剣でナイフを絡め取って横に飛ばす。
「カラト確保しなさい。」
ヴァラトヴァ正司祭の仕事中のスセンは、口調や表情、態度が普段とはがらりと変わる。
口の悪い性格のひねた少年が、ことお仕事となると、綺麗な言葉遣いの厳格で容赦がないが品行方正な司祭様に化ける。
始めのうちは、この切り替わりに慣れなくて、違和感満載だったが、カラトも今では切り替わりのツボが大分分かってきた。
カラトはクラムに近寄ると、腰に下げた袋から縄を取り出してクラムの手を縛る。
そうしながら、スセンがカイジと向き合っている姿に目を移した。
カイジはスセンの腕前を見て、その懐に飛び込む勇気を無くしたのか、短剣を構えてじりじりと後退しながら様子を窺っている。
「クラムを嗾けていたのは、貴方だったのでしょうか。直接手を下さなかったとしても、貴方のしたことは許されざることです。いえ、貴方の方が罪深いかもしれない。」
スセンが腰を落として両手の剣を構えた。
カラトはそこで、石を散らしながら近付いてくる足音に気が付いた。
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