四の章 誘蛾灯

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『ようやく出逢えたの…』 『ずっと待ってたのよ…』 『本当の意味で私を満たしてくれる人を…』 『逃げないでね…』 『好きに食べていいんだから…』 四の章誘蛾灯 薄暗い、男と女の淫香が漂う部屋。 消臭剤で誤魔化しても、決して消えることなく漂い続ける匂い。 幾多の男と女の匂いの粒子が混ざりあい、部屋そのものを成しているような、そんな空間。 男は今、そんな空間に新たに自分と女の匂いの粒子を混ぜ合わせ、そして継ぎ足していく。 「あっ…、んっ、そうよ、あなたの好きにしていいのよ…」 男は女に覆い被さり、耳から首筋に向かい舌を這わせる。 左手は女の乳房を揉みながら、右手は女の頭を抱く。 男の動きはぎこちない。 初めての時に女が男にしてくれたようにしようとするが、上手くいかない。 男は焦る。 好きにしていいと言われても、何をしていいか分からない。 今考えれば男のセックスは、雑な愛撫と入れて果てるだけの、自分よがりな単調な行為だったのだろう。 だから分からないなりに、女がしてくれたことをなぞろうとする。きっと、そうすれば女も感じてくれると思い。 すがるように。 男の荒い息づかい。 「大丈夫よ。ゆっくり。そうよ、やさしく」 ああ…。 くっ…。 んっ…。 徐々に女の声は、男の愛撫に合わせて響くようになる。 男はその声に合わせるように、さっきより幾分流れ良く愛撫を続ける。 男は思う。 女の掌で踊らされてるようだ。 俺は猿だ。 女の声でのせられ、そして芸をする猿だ。 でもそれでいい。 今は女の声を途切らせないように、この淫靡な声を聞き続けるために。 男の手が、女の軽く開いた内腿を撫で上がり、そして秘部にそっと触れる。 「ああ…」 女はビクンと身体を震わせ声をだす。 男は触るか触らない程度の軽さで、秘部の突起をさする。 女の声が徐々に激しさを増す。 男は少しだけ力を強めて、更にさする。 女の秘部は、それに合わせるように液を溢れさす。 その液が潤滑油となり、女の突起は男の指をスムーズに滑らせ、熱く膨らみ、それにより感度をあげていく。 「いいわ…。そのまま続けて…。お願い…」 ああっ、ああっ…。 女の声が更に大きく激しくなり、それにつられるように男の息づかいも荒くなる。 愛撫する男も、女の快楽を分け合うように自分も感じる。
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