行ってはいけない廃ラブホテル

　最深部の部屋の手前にW君はいたそうです。真っ青な顔をして茫然自失としていたそうです。
　廃墟の中は荒れていたけれどゴミなどはなかったそうですが、そのW君がいたあたりにはドブの腐ったような臭いが立ち込めて、何人かが吐き気やめまいを訴えたので、すぐにW君を連れてその場を後にしたそうです。

　W君に何か見たのか？　と尋ねたそうですが、W君は何も見ていないと言い張ったそうです。ただW君の様子はただ事ならざる感じだったとO君は言っていました。

　W君が事故死をしたのはそれから一週間後くらいでした。長い田舎の直線道路でバイクでの単身事故だったそうです。相当なスピードで道のわきに突っ込んだんだとか、その死の少し前くらいに何かに追われていると友人に話していたそうです。
　後に残されたビデオを見てみるとちょうどW君が立っていた最深部の辺りを映している間、うなり声の様なものが録音されていたそうです。
　でも、その時その場いた誰もがそんなうなり声は聞いていないと言っていたそうです。